地味優等生→リアルシンデレラ ~みつけてください王子さま~
 地面に落としたままの携帯の側で立ち尽くすひー君を、走りながら振り返って手を振った。

 ひー君は携帯なんてどうでも良いみたいに、私を追いかけようと足を動かす。

 だけど、ここから家はそう遠くないし、また家族と居合わせるのも億劫だ。今度はお母さんとも会いそうで、そうなると彼は家に帰るのがもっと遅くなるだろうから。

「大丈夫、一人で帰れるから!ありがとう!」

 それだけ言って顔を前に戻した時、右の耳に引っ掻くような違和感を感じた。でも、それよりもリッキー君のか細い鳴き声が聞こえた気がして、足を急がせる。

 体はとても軽やかだった。

 今日の出来事は夢のようだけれど、夢じゃなくて。

 自然と笑みが漏れた。

 自分でも、気持ち悪いくらいに浮かれていることが分かる。ユイちゃんや彩音に今日のことを報告して、お礼も言いたい。

 帰り道のリズミカルな足音。

 夜空の星に見守られ、私は始終笑顔だった。
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