地味優等生→リアルシンデレラ ~みつけてください王子さま~
 それからはされるがままで、することのない私は朧気に見える速川親子の姿、髪に何かが巻き付けられていく感覚、さらに機械が運ばれてきて、頭に袋のようなものを被せられ、機械から袋の中にじんわり温かい蒸気が流れ込んでくるのを大人しくじっとしていた。

「パーマの薬剤を髪に浸透させるためにナノミストスチーム、まぁ言うなればこの蒸気を使ってるの。ダメージを極力抑えることができるし、艶のあるウェーブになる」

「本当なら無報酬でこれ使われたくないんだけどな」

「母ちゃんに黙ってこんな高いもん買ったんだから、私にだって使い方覚えてもらって損はないんじゃない?」

 仲いいんだなぁと、しみじみ思っていると「仲悪いから」と二人同時に返され戸惑う。思ったことをつい口に出してしまうという失態をしていたようだ。

「そ、それにしてもすごいよね、小さい時から美容師になることを目指してたんでしょ?」

 良く見えなくても二人がいがみ合っているのが分かって、話題を変える。

「んー、そうっちゃそうだし、違うっちゃ違う」

 曖昧な返事に首を傾げる。……頭の重さがいつもより重くなっていて、すぐに元に戻す。

「はじめはハサミ握るだけでこの頑固親父に怒られたから、母ちゃんに化粧の仕方を教えてもらって、誰もいない時に勝手に練習してた。ほとんどこの人への対抗心だよ
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