地味優等生→リアルシンデレラ ~みつけてください王子さま~
 夏休みの今、立花君はどこに居て、何をして、何を見ているのかな。

 ……ただ、会いたい。

 会ってもうまく話せないし、緊張しちゃうし、後からああすれば良かったのにとか思うことばっかりだけど、

 やっぱり、会いたい。

 遠く聞こえる数人の笑い声、どこかで鳴り響いているホイッスル、相変わらずビュービュー吹く冷房の風、描き終わらないクラスTシャツ。

 誰も居ない教室で、眼鏡を取って机に突っ伏してみる。顔を左に向けると、いつもより大きく感じる窓から計り知れない青さを見せつける空があった。

 また去年と変わらない夏休みになるのかな。図書館に通って、宿題をして、時々母のやっているピアノ教室の手伝いをして。

 変わらない、いつまでも。

 ……ほんとに?

 私は立ち上がって、運動場で声を張り上げて部活に勤しむ人達の姿を窓から眺める。

 私はこんな風に、ずっと誰かが輝く姿を見ているだけでいいのかな。

『柊さんが諦めずに立ち上がってくれたから、俺も頑張れた。だから、お互い様!』

 変わりたい。

 彼を遠くから眺めるだけなんて、嫌だ。

 あの笑顔を私にだけ向けてほしい。

 どんどん我が儘になる私の気持ち。

 空を流れる金魚のような形をした雲は、悠々と泳いでいた。
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