いつかウェディングベル

透の言葉に甘えて私はゆっくりお風呂に浸かっていた。


温かいお湯に身を委ねのんびりと過ごすなんて久しぶりのことだ。


これまで芳樹と戦争のような時間を過ごすことが多く、のんびりとした時間はそう多くはなかった。


それでも芳樹の顔を見られればそれで心は休まっていたけれど、仕事と子育ての両立は正直時には辛いものもあった。


だから、今のこの生活は私にとって心地いい時間になりつつある。


父親がいるとこうも違うものだと身をもって感じてしまった。




第一に、芳樹が一番嬉しそうだ。


父親はいないと思っていただろうに、いきなり現れた父親に戸惑うかと思えばそうではなく喜んで透との時間を過ごしている。


父親にしか出来ない過ごしかたや話もあるらしく芳樹には今の生活は嬉しいようだ。


それ以前に父親と一緒にご飯を食べたりお風呂に入ることが嬉しいようだ。


これまでしたくても出来なかったことを出来るようになったのだから、芳樹にとってはここは天国のような場所だろう。


だけど、


天国は芳樹だけじゃない、私だってそうだ。


ここは私達母子にとっては天国のようなところなのかもね。


そんなことを考えているといつの間にか私は湯船の中で眠ってしまっていた。


これまでの仕事やプライベートでの緊張続きに気の休まる時間があまりなかった。


子育てに追われ大変な毎日を過ごしてきたけれど、透との再会後はもっと慌ただしいと言うか落ち着かない毎日で心臓に悪い日が続いたような気がする。


自宅アパートとは違って広くて全身を伸ばして寛げる湯船に癒されてしまった私はすっかり眠ってしまった。


眠りから覚めることなく心地よい温もりとお湯に浸した体が軽くなっていたのが心までも軽くなったようで更に深い眠りについてしまった。


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