いつかウェディングベル

企画で使用される商品リストの資料を見ながら商品の確認をしていく。


吉富さんが資料を見ながら簡単に説明をしていく間、私は心臓がドキドキと音が大きくなっていくのが分かる。


かなりの動揺と緊張で手に汗をかいてしまった。


けれど、ここで平静を装わなければ私が透に未練が残っているのを教えているようで悔しい。


透には勿論のこと、吉富さんにもバレては困る。


特に吉富さんは商品管理部門内で私を捨てた男はロクデナシということを知っている。


部署内の人なら誰もが最低最悪男として認識しているのだから。


そんな男がここにいる専務となると私の話がまるで作り話のように差し替えられる可能性だってある。


だって、ここにいる専務としての透の評判は良過ぎるから。


平社員の私の所まで噂は聞こえてくる。


仕事の鬼で仕事に関しては妥協は許さない。


だけど、責任感があり最後までやり通すその手腕に誰もが惹かれる。


吉富さんが言ったように今でもきっと女には不自由していないでしょうね。


私と付き合っていたあの当時だって、私が付き合っているのが不思議に思えるくらい人気があった。


年上の大人な透にはいつも美人の女が群がっていたのだから。



「田中?」


吉富さんから小さな声で呼ばれハッと我に戻った。


そう、今は企画会議中。


話し合いの席だった。つい、透の顔を見ていろいろなことを考えてしまっていた。



「.....ということで、これだと、年齢の幅が限られてこないか?」


資料の中の派手な衣類にペンを突き立てている透の顔は冷酷そのもの顔をしている。


そうよ、この男は冷酷な男なのだから未練なんかあるはずない。


そんな相手じゃないのだから。 


私、しっかりしろ!

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