いつかウェディングベル

「顔色もあまり良いとは思えない。仕事は休むんだ、いいね。」


休む? 私はシングルマザーよ。会社を簡単に休めるわけない。


職場の皆はシングルマザーに対しての理解はあるけれど、休みが多くなるほど収入が減る。


私が息子の芳樹と生きていくためにはお金は大事なもの。


これなくして私達母子の生きる術はない。


「加奈子?」


「心配してくれるのは有難いけど、仕事は休めないわ。」



ベッドから降りようとするとふらついて倒れようとした。


すると、透が私を抱き止めて助けてくれた。


透の腕にすっぽりと包みこまれると、まるで二人だけの世界にいるようで思わず緊張で頬を赤く染めてしまった。


「ママ?」


今にも倒れそうな母親を見て芳樹が心配そうな顔をしていた。


こんな小さな我が子にこんな顔はさせられない。


子どもは、ちょっとした事にも敏感に反応するのだから気を付けなければいけないのに。



「ママは大丈夫よ。ほら、元気モリモリ!」



芳樹にガッツポーズをして見せた。それも、とびきりの笑顔で。


「芳樹に心配させたくないなら今日は会社を休んでくれ。」


どちらかと言えば芳樹より透の方が私の顔色を気にしている。


確かに、少し目眩もするし気分は良いとは言えない。


収入が減るのは堪えるけれど、芳樹の為に体を休めることにするわ。


「分かったわ。今日は大人しくあなたのいう通りにするわ。」


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