いつかウェディングベル

会社を休むことにした私の看病をするのだと言い、この日透までも仕事を休んだ。


そして、芳樹も当然の事ながら会社の保育施設には行かず家にいることになるのだけど、


透一人に慣れないことをさせて大丈夫なのか不安になってきた。


透なりに慣れない家事仕事を必死でやってくれてはいるけれど、私は安静にするどころか物音ひとつする度に何事か?と透の所へと駆け寄りとても心臓に悪い時間を過ごす。


「うわぁ、焦げた?!」


洗濯機に入れる洗剤の量を間違うのは良いとして、鍋の焦げは我慢ならない。


臭くて鼻が曲がりそうだ。


「パパ、くさい。」


芳樹が焦げた鍋を見て鼻を摘まんでいた。そしてかなり不安そうな顔をして透を見ていた。


社長子息として大事に育てられたはずの透に、こんなこと出来るはずはないだろうし、第一実家に居た時はお手伝いさんなり面倒を見る人がいたはず。


こんなことを仕事を休んでさせる私が間違っていた。


大人しく会社を休んで透には会社へ行ってもらえれば良かった。


けど、今更何を言っても遅い。


「芳樹、これを片付けるからちょっと待っていろ。」


ぎこちない手で焦げた鍋を洗っていた透だが、勿論それで綺麗に元通りになるはずはない。


ため息だけが出てしまう。


「その鍋は金タワシで擦ってはダメよ。その手のは一度沸騰させるの。それに、そっちのについてはクレンザーが欲しいわね。と言ってもここにはないわね。」


「ごめん、騒々しかった? 静かにするから加奈子は寝てていいよ。」


こんな状態では眠れないし、第一、芳樹に何を食べさせるつもりなのか心配で大人しくしていられないわ。

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