いつかウェディングベル
透の好みで企画を進めてなるものですか。
私たちの選択は間違ってはいない。前回の企画でも好成績を収めた。
売上貢献できているのだから、そんな私達やデザイナーの意見を無視なんてさせない。
「そうかしら? 専務は上品で体のラインは崩しもっさりした洋服がお好みでしょうから。」
厭味ったらしく言うと流石に吉富さんは狼狽えていた。
「誰もそんなことは言ってはいない。ただ、これだとケバケバしいと言ってるんだ。今回のテーマの『女性らしさ』からはかけ離れている。」
透も私に負けずに強い口調で言い返す。
その口調に合わせたかのような冷たい目線が私の心をを捉えるかのように見つめる。
もう透の言いなりにはならない。私の心は透の好きに出来ないのだから。
それに、これは仕事。仕事では絶対に透には負けたくない。
「ちっともそんなことありませんけど。お堅くて古いセンスでものを言わないでください。」
まるで敵対視したような言い合いだ。
透は資料を無視し、私は資料を通そうとする。これではいつまで経っても平行線だ。
そして、そんな私と透の会話に吉富さんは入れないでいた。
私たちの間に散る火花に恐れをなしている様な状態だ。
「話にもならない。ちょっと失礼する。」
そう言うと透は私を睨みつけて会議室から出て行く。
そんな透を横目に私は大きなため息を吐く。
「おい・・・言ったばかりだろ。専務相手に喧嘩はよせ。それに、専務の目利きはしっかりしたものだ。」
「デザイナーの企画書を見れば判ります。専務のおっしゃってることは腑に落ちません。」
「だがな・・・あれでは言い過ぎだろ。」
そんなことはないわ。私は資料通りに話を進めたいだけ。
そして、5分もしないうちに透は蟹江さんを連れて戻ってきた。