いつかウェディングベル
「芳樹を生んだことを隠していて恨んでない?」
「感謝しているよ。加奈子が命がけで生んだ子だ。あの子は加奈子の命なんだ。そして、俺にもそうだ。加奈子も芳樹も俺にはなくてはならない存在なんだ。だけど、俺を許せないだろう?こんな俺でも芳樹の父親でいていいだろうか?」
加奈子の抱きしめる腕に力が入ったかと思えば、一度俺から離れ俺の前に同じように跪いた。
そして、俺の顔を確認するかのように俺に触れてきた。
その手は少し震えていたが加奈子の顔は微笑んでいた。目に一杯の涙を浮かべて。
「芳樹は父親そっくりになって悔しいほどに透の息子だと分かるけど、私は透との繋がりが何もないの。それがとても悲しくて。」
「あるよ。俺達は家族だ。愛し合う家族だよ。そして、加奈子は俺の妻になってくれるんだよね?」
加奈子は頷いてくれた。
でも、言葉で聞きたい。加奈子の気持ちを。
だから、加奈子の顔を持ち上げてもう一度プロポーズした。
「俺と結婚してくれ。」
「幸せにしてくれる?」
「幸せにしたい。」
「本当に?」
「ああ」
「透と結婚したい」
やっと、気持ちが通じた気がした。まだまだ問題は山積みだけどこれから二人で少しずつ解決していくさ。
「おめでとう!!」
「やっと収まるところに収まったか。」
いつの間に親父もお袋も覗き見してたんだ?!
まったく油断も隙もない二人だ。そう思っているとその横からは増田までもが両手を握り締めて感激していた。
「さあ、忙しくなりますね!お披露目は何時なさいますか?結婚式は盛大になさるんですよね?坊っちゃんもいることですし善は急げですよ!」
俺たちより増田の方がかなり喜びを表していた。それだけ心配をかけていたんだろう。
俺が加奈子を大事にしていないと思わせていたのかもしれない。
加奈子が以前感じていたように。