いつかウェディングベル


例え加奈子の冗談だったとしても、せっかくのことだ。ここで加奈子の望みを叶えてやろう♪



「よし、今日は三人で風呂に入るぞ!」


「ええっ?! 不味いわよ。ここ、実家よ。」


「構うもんか。芳樹もいるんだ。今更何てことはないだろ?」



親父やお袋の手前、案の定、加奈子は恥ずかしそうにしているが本当はそんな甘い生活に喜んでいる。



俺がそうだから加奈子も俺と同じ気持ちのはずだ。



そうだよな?  って、こっそり聞くと真っ赤になった加奈子は頷いた。



親父は羨ましそうな顔をしていたが、お袋と増田はどう表現していいのか悩んでいた。そんな親達を見乍ら俺は加奈子と芳樹を連れてさっさと浴室へと行った。



昔の人間には今時の若夫婦の浴室事情なんて知らないものさ。



愛し合う者同士が結婚したんだ。食事や寝る時だけじゃない、いつも一緒に居たいものだ。特に新婚の間はね。



だから風呂なんて夫婦の愛情表現の場には丁度いいところだ。



三人一緒に入る浴室では芳樹が一緒だから加奈子に触れることは難しいけれど、芳樹の体を洗った後は増田に芳樹を渡し大人の時間を迎えることができる。



増田は一人グチグチと文句を言っていたようだがそんなの関係ないさ。



俺は加奈子と一緒に湯に浸かり加奈子を全身で感じたいんだ。



そして、リラックスした中でお互いに言いたいことを話し合うのにも良い時間だ。



体のふれあいだけではない。心のふれあいの出来る時間でもある。



「体はもう大丈夫なのか?」



「うん、もう大丈夫よ。」



「もうすぐ会社復帰できそうだな。」



「明日からでも大丈夫なんだけど。今、企画はどこまで進んでいるの?」



「吉富に全責任を負わせて任せているから、きっと今頃は昇進目指して残業しているんじゃないかな?」




加奈子の事を考える暇なんてないくらいに、吉富には仕事にプレッシャーをかけている。



昇進がかかってくれば加奈子だけでなく女などに構っている暇はないだろう。



それに、今回の企画を成功させなければ左遷するとも脅しておいた。



俺の女にちょっかいを出すとどうなるか思い知らせてやるつもりだ。


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