いつかウェディングベル
私が会議室でぶちまけた資料やパソコンの後片付けをした蟹江さんと吉富さんが透との会議を終了したのはそれから2時間後だった。
話し合いの結果どうなったのかは私には知らされなかった。
悔しい思いはあるが、私は透の仕事に関わるつもりはない。
だから、会議がどうなろうとも気に留めないことにした。
蟹江さんと吉富さんが会議室から戻ってきた。
二人の顔を見ていると特に変わった様子はなかった。
順調に話し合いは終わったようだ。
「田中さん、専務は今回は不問に付すそうですが、会社の備品にあれは不味いわね。」
蟹江さんには迷惑をかけたのだと思った。きっと透の機嫌取りをしてくれたんだろう。
それに、パソコンにお茶を掛けたのだ。後片付けではかなり面倒なことを押し付けた。
「すいませんでした」
ここは私が謝罪すべきところ。素直に謝るほうがいい。
「でも、まあ、意見の相違でいきなり交代となるのも問題なんだよね。
本来ならあの時もっと意見を出し合って話し合いをしたがいいんだけどね。」
吉富さんも透の強引なまでの交代劇に多少は難色を示している様子。
けれど上司である透の意見は私達には絶対だ。
「田中さんは意見を通そうとしたの?」
蟹江さんは事の経緯をよく知らない為に混乱させたようだ。
「そうだね。田中は一方的ではあるがデザイナーの企画書をよく熟知した上での意見だと思うよ。
ただ、専務がそれを気に入らなかったんだろうね。」
商品管理部門では群を抜いて知識も経験もある吉富さんに、そんなセリフを言ってもらえればそれだけで十分だと思った。
「上から何かあったのかもしれないな。」
私達の話を聞いていた部長がフォローのつもりかそんなことを言っていた。
上層部の連中の考えは私達凡人には理解不可能。
特に透の考えは分からない。