いつかウェディングベル

翌日からの新婚旅行に備え、俺と加奈子はその夜は直ぐにベッドへと入りたっぷりの睡眠を取ることにした。


翌朝、俺達より先に芳樹が目を覚ましていた。しかし、まだ俺達がベッドの中から起きそうにないと分かると祖父母の寝室へと行った。


まだ眠そうに目を擦りながらも目が覚めてしまったらしく、芳樹は加奈子の代わりにお袋に甘えていたようだ。



「加奈子? 起きろ。もう芳樹も起きているぞ。」


「ん? 芳樹? 芳樹、いないじゃない。」


「多分、俺達が寝てたからお袋の所にでも行ったんだろう。」


「じゃあ私達も起きなきゃ。」



昨日はバタバタした一日を送り俺も加奈子もかなり疲れがたまっていたようだ。


そのお蔭で今朝まで熟睡してしまったが、時計の針を確認すると予定よりかなり長めに寝てしまっていた。



「朝、8時過ぎてるぞ。」


「え? もう、そんな時間なの?」


「もっと抱きしめて眠りたいが、新婚旅行へ行けば好きなだけ加奈子を抱きしめられるんだ。今は我慢するよ。」



そんな甘えたセリフを言うと、まだ、加奈子は慣れないのか顔を赤らめて俺を見つめる。


その反応が楽しくてついつい何度も言いたくなる。



「透、荷物はどうするの? 昨日と同じでいいの?」


「ああ、いいよ。もしかして、もう片付けた?」


「そうよ。だから、もう一度荷造りするわね。」



2泊3日の旅行の荷造りなんて大したことはない。下着の替えさえあれば後はどうでもいい。


新婚旅行では洋服なんてあってない様なものだ。


俺には加奈子さえいれば服装なんてどうでもいい。




「新婚旅行だからってその厭らしい目で見つめるのやめてよね。」


「厭らしいか?」


「うん、今にも襲いそうな目をしてる。」


「今夜は襲うかも」



そんなたわいない会話が今の俺達には必要で幸せな時間でもある。
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