いつかウェディングベル
俺と加奈子は支度を整えると荷物を持って1階へと降りて行った。
リビングへと行くと俺達の装いが会社へ行く装いと違っている事に親父もお袋も驚いた顔をしていた。
「まさかとは思いますが、坊ちゃん、新婚旅行のやり直しをするつもりですか?」
「ああ、そうだよ。だから、あと二日だけ芳樹を頼んでいいかな?」
「私は構いませんが。」
「私も構いませんよ。芳樹と一緒に過ごすのはいつもの事ですからね。ね、芳樹。今夜はお祖母ちゃんと一緒に寝ましょうね。」
家政婦の増田もお袋も問題ないが、親父は俺を睨みつけるような鋭い目で見ていた。
昨日、呼び戻されたからともう一度新婚旅行をしたいのは俺達の我が儘だと思っているのだろう。
「こういう記念行事は完璧にしてこそ意味があるんですよ。それに、そろそろ芳樹の他にも孫が欲しいでしょう?」
「お前はどこに居ても孫は直ぐに出来そうに見えるが? しかし、呆れてものも言えんよ。」
「なら、黙っていて下さいよ。」
「まあ、いい。今回は私がしっかり社の方は監督しておく。心置きなく新婚旅行を楽しんできなさい。」
「はい、後はよろしくお願いします。」
思ったより反対の言葉がなくスムーズに旅行に行けることにホッとした。
正直な所、お袋に反対されるのではないかと心配していた。途中で帰宅したとは言え、新婚旅行は1泊はしたのだから。
必ずしも今日旅行に行かずとも他の都合の良い日を見つけて旅行に行けと言われるかと思った。
俺と加奈子は芳樹を親父とお袋に任せ、朝食も取らずに俺の車で旅行へと出かけた。
今回の行先は決めていない。
取りあえず車を走らせ加奈子が希望する所へ連れて行こうと思った。
折角の新婚旅行なのだ。加奈子を思いっきり甘やかしたい。