いつかウェディングベル
別居については、芳樹もいるし加奈子の体調が万全になってから話し合おうと思った。
まだ、急ぐことでもないから・・・
取り敢えずは、久しぶりに現場復帰する加奈子が職場の皆と上手くやれるかどうかが気がかりだ。
一社員に過ぎない加奈子がこれだけ立て続けに会社を休んだのだから。職場によっては嫌な顔をされる。それが、今の俺には心配でならない。
俺の心配とは裏腹に加奈子はいつも通りで、逆に久しぶりの職場にかなり浮かれ気分のようだ。
俺の心配はどうやら無駄なようだ。
朝起きてから加奈子を観察していると面白いほどに顔がにやけているし、歩く足取りは軽いどころかスキップを思わせる。
俺は自分が心配性ではないかと思わず笑ってしまった。
「加奈子、会社に行くぞ。」
「はーい」
明るい加奈子の笑顔に俺の心まで明るく楽しく感じる。
きっと、今日も一日いい日になることだろう。
そう信じて会社へと俺達は向かった。
いつものように会社の駐車場へと車を停めると俺達は其々のエレベーターへと乗り込む。
俺は役員専用の、加奈子は一般社員用のエレベーターに。
専務室のあるフロアでエレベーターを降りると、そこは重役向けの部屋が並ぶフロアなだけに、ひっそりとしている筈なのに、今日は珍しく秘書たちが騒がしい。
「騒がしいぞ。朝から何かあったのか?」
秘書らの顔を見ていると誰も何も言おうとしないが、俺を見る目が何かを言いたそうだった。
しかし、直ぐに各自持ち場へと戻って行った。
「何だったんだ?」
意味が分からない俺は専務室へと行き、コーヒーでも飲みながら気分を仕事に集中させようと思った。