いつかウェディングベル

パソコンの電源を入れ、起動するまで窓の外の景色を眺めようとしていたら、秘書らが数人専務室へと入ってきた。



「いったい何なんだ?」



「専務は、今回の新企画では社員とのツーショット写真を撮影されることになっていましたが、」


「ああ、あれは一旦保留にさせた。なんだ?撮影の催促でもしてきたのか?」


「いえ、専務不在中に写真が掲載されています。」


「俺は撮影はしていないぞ。掲載って、誰がどの写真を勝手に使ったんだ?」



秘書に言われるまま我が社のサイトを確認すると俺は世にも恐ろしい写真を見てしまった。


予定より少し早めにサイトは一般公開され、その新企画の女性向けの洋服販売サイトのトップページを俺の写真で飾られていた。


俺と言うより俺達だ。


俺と加奈子のあの病院でした挙式のウェディング姿の写真だ!


こんなことが出来るのは親父だけだ。


こんな馬鹿げた事を思い付くとは、例え社長権限だとしてもやりすぎだろう!!


そもそも本人の承諾無しでこんなことが許されるのか?!


俺の頭はパニック状態で正常な思考回路が何処かへぶっ飛んでしまった。



「これ、いつから公開されているんだ?」


「やはり、ご存じなかったのですね。今日から公開されています。」


「それは社内大騒ぎですよ。」


「すまないが、一人にしてくれないか。」



秘書らは顔を見合わせると部屋から出ていった。


俺はサイトに掲載されている俺達の写真を見ていた。


写真は上手い具合に加工され人物よりウェディングの雰囲気を前面に押し出した写真になっていて俺達の顔は其ほど強く写し出されてはいない。


あくまでもトップページを飾るイメージ写真にされていた。

しかし、俺達を知るものはこの写真が誰なのかは直ぐに分かる。顔はボカシが入ればモデルの特定は出来ないが、ボカシのない写真だけに特定は簡単なのだ。



何故こんなことになったのか親父を問い詰めたい。


が、その前に加奈子だ!


加奈子はいったい今頃他の社員にどんな目に合わされているだろうか?

俺は専務室から走って出ていった。

< 239 / 369 >

この作品をシェア

pagetop