いつかウェディングベル
それにしても、何故親父はこんな目立つ写真を使ったのか俺には理解できなかった。俺と加奈子が結婚披露パーティーを先延ばしにしているからわざと懲らしめの為にやったのか。
親父を問いつめた所で既にこの写真を使われてしまったのだからもう遅い。
だからと、公表もせず前触れもなくいきなりこれでは俺も加奈子も周囲に対する顔がない。
「ねえ、イメージ写真なら人物でなくても風景でもいいわ。何かそれっぽい写真はないの?」
「急に言われても準備できるか。サイトに掲載するのだから無断で使用は出来ないし。」
「私達の肖像権ならどうでもいいの?」
写真の入れ換えを求める加奈子の気持ちは良く分かる。それは、きっと俺達だけでなく社員の中にもそう感じている者がいるだろう。
それに、気づいているだろうか?
写真の交換を求めながら俺を見つめる加奈子の瞳がとても熱いことに。
まるで炎に包まれるかのように火傷しそうな瞳に俺は逆に嬉しくなる。
加奈子が自分のものだと周りに知らしめているようで。
「ねえ、ちょっと何を笑っているの?」
「そんなに熱くなる君を見るのもいいと思って。」
俺はまた余計なことを口走ってしまったのだと後悔したが時は既に遅し。
まるで氷のように冷たい表情を見せる加奈子に恐ろしさを感じてしまう。けれど、そんな加奈子も愛らしく抱き締めたくて俺の体はウズウズしていた。
「話があります。」
周りの野次馬を気にした加奈子に近くの使われていない会議室へと連れていかれた。
そして、会議室へと入るなり加奈子は涙目になり俺に抱きついてきた。
きっと、突然の出来事にどう対処していいのか加奈子なりに悩んだのだろう。
俺は加奈子を思いっきり抱き締めてキスした。
会議室と言うことも忘れて。