いつかウェディングベル
「それに考えてもご覧よ。君は平社員として周りに認識されている。そんな平の君が社長に直談判など通常では考えられない事だよ? もし、重役たちが君の行動を問題視すれば解雇になる可能性だって考えられなくもないだろ?」
加奈子が俺の妻と公表していれば二人で社長室へ行くことに何のためらいもないし、周囲からの反発の声も上がることは当然ない。
だけれど、今の加奈子の様に俺との関わりを隠しながら専務と対等の態度を取ろうとしても誰も認めてはくれないんだよ。
どんなに一つの企画を作り上げたと言っても所詮は平社員なんだ。そんな程度のことで会社での地位は何も変わることはないんだよ。
発言権が欲しければ専務の妻の立場を手に入れるしかない。それには、俺達のお披露目パーティを開き公表するしかないんだよ。
と、今、こんなこと加奈子に話しても通じそうな顔をしていない。
あからさまに俺に不機嫌極まりないって顔を向けている・・・・
絶対に、加奈子は俺を信じていないって顔をしているぞ。
「加奈子、愛しているなら俺を信じろ。」
ここは俺の愛情で加奈子を黙らせるのが一番いいのか?
だとすれば加奈子の好きなキス責めが一番効果がありそうだ。
「加奈子、待っていてくれるだろ?」
加奈子の頬に触れると俺の手は頬からそのまま髪の中へと手を滑らしていく。
そしてそのまま俺の方へと引き寄せると加奈子もかなり意識しているのか頬を赤く染めた。
ああ、このまま抱きしめてベッドへ連れ込みたいよ。そして大人しくベッドで俺が戻るのを待っていろと言いたいところだ。
「透、」
俺が見つめ頬に手を振れるだけで初心な花嫁に変身する加奈子なのに、どうしていつも俺の思い通りにならないのか。本当にじれったくなってしまうよ。
「愛してるんだ。」
本気で色仕掛けで加奈子を封じたいとは思っていないが、どうしてもそれが必要だと感じたし俺の欲望も抑えられなくて体が反応してしまった。
「透」
お互いの熱が引き寄せ合うのかお互いの唇を味わってしまった。
そして、そんな時に限って無断で会議室の扉を開ける輩がいるものだ。
開いた扉の先には大勢の社員達が俺達の話し合いの結果をこれ見よがしに待っていた。