いつかウェディングベル
俺達の話し合いの結果を知りたがった社員達の野次馬どもが俺達の関係を露わにしてしまうことに。
俺も加奈子もまさか会議室のドアを開けられるとは思わず、それに、二人ともドアに鍵をかけたものだと勘違いをしていてキスを楽しんでしまった。
勘違いをしたまま俺達は安心しきってさっきから抱擁したりキスをしたりと・・・
まさか、こんな二人の姿を野次馬根性の社員達に見られるとは思いもよらなかった。
俺と加奈子の驚きより野次馬らの驚きの方が勝ったようで、当然の如く廊下はもとより各フロアへと一気にこの光景をまるでビデオでも見ているかのように話は伝わっていく。
社内では「専務の道ならぬ恋」と何故か俺の一方通行的な悲恋の話として広まっていった。
「それで、会社でのラブシーンを社員に見られサイトの結婚式の写真を他の写真と交換したいと?」
社屋ビルの最上階にある部屋の窓にはいかにもドラマに出てくるような都会のビル群が写し出され、
それらの景色を背景に社長室にある大きなデスクの大きな椅子に腰かける威厳のある風格で俺を見上げながらも見下す社長の姿が俺には無性に腹立たしく感じた。
そしてその社長が俺の親父で、俺と加奈子の結婚には賛成した癖に何かと口を挟もうとする、どこにでもいるお節介親父だ。
「親父、いや、社長、ラブシーンはともかくもプライバシーの侵害でしょう! 人の結婚式の写真を勝手に使うなんて。第一、俺達の結婚を知っている人間は極少数なんですよ!」
「いつまでもそうだから『道ならぬ恋』なんてこと言われるんだ。呆れてものも言えん。それに、家だけでは飽き足らずに会社でも彼女を襲っていたのか?」
「そんなことしてません! あれは、加奈子を説き伏せるのにしたまでの事です。」
そもそも加奈子が俺に従順ならばこんな苦労はしないで済むんだ。
何かにつけ俺に反抗的だし自分の意見は曲げようとはしないし。扱い難いったらありゃしない、なんでこんな面倒な女に惚れたんだって自分の趣味を疑ってしまう。