いつかウェディングベル
そんな江崎さんの言葉に頭を痛める吉富さんが江崎さんを睨みつける。
「お前には無理だ、江崎。」
「そうよ、吉富さんだって落とせないんだから。」
「蟹江、一言余計だ・・・・」
気まずそうな表情をする吉富さん。
そんな吉富さんに驚いている江崎さん。
二人のやり取りを面白そうに見ている蟹江さん。
これは商品管理部門では良く見られる光景だ。
だから同僚の岩下君は口を挟まず呆れ顔でこの様子を横目で見ている。
「田中の代わりに可愛い女の子入社してくれませんかね」
珍しく岩下君が会話に参加してきた。
けれど、私が会社を辞める前提の話になっているからか、他の人たちは何も言えずに黙り込んだ。
「これは失礼」
そう言うと岩下君は持ち場へと戻って黙々と仕事を続けた。
皆どう反応してよいのか困ってしまったようだ。
それに、仕事はあるのだからいつまでも私の話題に振り回されるわけにはいかない。
岩下君の一言で、部長はじめみんなはそれぞれのデスクへ仕事へと戻っていった。
その頃には芳樹と一緒にアパートへと帰って行った私はパソコンを広げ職探しを始めた。
インターネットの求人案内をいろいろ調べるも芳樹をまず預かってくれるところを決めなきゃ仕事に出れない。
それに、就業時間通りに帰れる仕事でなければ残業は到底無理なのだから。
この会社のような保育施設があればそれも可能なのだろうが、やはり、他を探すのはかなり厳しそうだ。
パソコンの画面と睨み合いっこしながら大きなため息をついてしまう。
「ママ?」
そんな私を見て芳樹が心配そうな顔をしている。
子どもに悟られるようでは母親失格ね。子供を不安にさせてはいけない。
きっと何とかなる。いいえ、何とかして見せなければいけないのよ、私は。