いつかウェディングベル
翌日、朝、いつも通りに出勤してきた私。
芳樹を保育施設に預け職場である商品管理部門のデスクへと向かう。
「おはようございます!」
いつも通り明るく挨拶を交わし出社した私を見てみんなの動きが止まる。
「おはよう、田中君。今日は機嫌良さそうだね。」
私の機嫌の良さに部長も安堵したような顔をして言葉を交わす。
「はい、人事課で説明したら受理されました。なので、今月いっぱいで辞めますので皆さんお世話になりました。」
そう言って深々と頭を下げて部長に挨拶をした。
「あ、そうそう。来週からは有給使いますから今週いっぱいで来ませんのであしからずです。」
満面の笑みでそう言うと部長はかなり戸惑った様子だった。
「えええええ!!」
横から驚いた声で大騒ぎしたのが蟹江さん。
私が担当を外され後任になった蟹江さんとしてはかなり気まずいだろう。
「けど、専務は・・・・その備品の弁償は?」
吉富さんはどうも私の退職となるとオロオロしてしまう様だ。
言葉を失いかけている様だ。
「はい、大丈夫ですよ。ちゃんと請求書出せって言ってやりましたから。」
「人事課でそんなこと言ったのか?!」
「はい、課長。言いましたよ。必要なら社長宛てにお金を送りましょうか? それでも構いませんよ。」
私がそんなことを言うものだから部長も課長も真っ青になってしまった。
周りの社員も完全に私の行為に呆れ顔をして何も言えなくなっていた。
「いや、それはしないでくれ!! 私が困るんだよ!!」
「部長、そうですとも! 田中君! そんなことされたら我々が困るんだよ!
ただでさえ専務を怒らせ、我々の管理不行き届きになってしまう!」
流石に社長を巻き込むような発言には部長も課長も混乱してしまった。
自分たちの保身に関わってくると笑いごとでは済まされないようだ。
これまでと違ってかなり青ざめていた。
「大丈夫ですよ、部長、課長。何と言っても私が辞めるのですから、お二方への影響はありませんよ。
だから、そんな心配の必要はありませんよ。」
私はにっこり笑ってそう言った。