いつかウェディングベル

「自分が情けない男だとよく分かったよ。何度アプローチしても君が靡かないところで気付けばよかったんだ。俺は本当に頓馬で馬鹿な奴だ。きっと専務もそう思っていたんだろうな。」


「違うわ。私が一番苦しい時に吉富さんが助けてくれたことは感謝してるわ。だって、吉富さんや皆が助けてくれなければ今の私はなかった。」



きっと、どんなに加奈子が説明しても単なる言い訳に過ぎないだろう。


加奈子との未来に少しでも希をかけていた吉富に何を言っても同じだろう。



「もういいよ。これまでしつこくして悪かったよ。もう、これからは節度ある態度を取らせてもらうよ。」


「なんて言ったらいいのか・・・・私、」


「専務と幸せなんだろう?」



吉富の言葉に加奈子は吉富の顔を直視した。


吉富は残念そうな顔をしながらも、加奈子に優しい笑顔で話してくれていた。


そんな顔を見た加奈子はホッとしたのか自分までも笑顔になり答えていた。



「ええ、とっても幸せよ。」


「ちぇ・・・惚気かよ。」


「え・・・と、そうじゃなくて、だって、今、吉富さんが聞いたから!」


「分かったよ、専務に宜しくな。それに、殴ったからって俺は謝るつもりはないからって伝えておいてくれ。」



吉富は言いたいことを言ってしまうと自分のデスクへは戻らずに廊下へと出るとどこかへ行ってしまった。


二人の会話が終わると一斉に他の社員達が加奈子の周りに集まった。


特に、部長と課長は今の吉富との会話で理解出来なかったセリフの確認をしようと目をキラキラさせて加奈子に食いついていた。



「田中君!! 今の会話はどう解釈したらいいんだね?!」


「部長、取りあえず落ち着いて!」


「課長、これが落ち着いていられるかね?!! 今の話だと田中君は田中君ではなくて、そのどう言ったらいいんだ?!」



部長と課長はオタオタするだけで言いたいことの半分も言えない様子に、岩下がさりげなく横からボソッと声にした。



「田中さんって、専務と結婚でもするのか?」


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