いつかウェディングベル
しかし、私の取る行動が突拍子もないことらしくただただみんなを混乱に巻き込んだだけのようだ。
「君のその行動力、この部門でいかせないものか・・・」
「吉富さん、それ嫌ですからね。」
そうだ。私は本来ならここで頑張って成績を上げて評価してもらいたい。
だけど、透がこの会社の専務だと分かった以上ここにはいられない。
いずれ親の跡を継いで社長になれば婚約者は社長夫人となる。
そんな二人の下で一生死ぬまで働けというの? それは残酷すぎるわ。
それに、その間、息子の芳樹の存在が知られた時がどうなるのか怖くて不安で押し潰されそうになる。
そんな私の気持ちを知る人は誰一人としてここにはいない。
だから、
「あなたのその度胸、仕事で生かさない? きっと出世するわよ。」
この蟹江さんみたいなセリフも吐かれてしまうんだ。
でも、絶対に芳樹のことは秘密なのだ。知られてはいけない。
「大丈夫! ライバル会社で頑張ります!!」
元気よくにこやかにして言い返す。
「おいおいおい、ここで頑張ればいいだろう?!」
「部長、とんでもないですよ。こんな会社は1秒たりともいたくないんですからね。」
そんなことを力入れて話していると厄介なヤツがやって来た。
「それで社長宛に始末書を送り届けたわけだ。」
もの凄く不機嫌そうな顔をして透がやって来た。
そんなに私の顔を見たくないのなら来なければ良いのに。
私だって、これ以上透の顔を見ていたくないのに。