いつかウェディングベル
久しぶりに加奈子と二人で過ごせると胸を踊らせていたが、ここでまたもや俺を裏切る加奈子の行動に悔しい思いをした。
「今日はお父さんの病院へ行くの。結婚式の話は既にしているけど、もう日にちがないでしょ?お父さんが無事に式に出れるかリハビリ具合を確認したくて。」
加奈子が義父とバージンロードを歩く姿を想像してしまう。
きっと、あの義父のことだ、俺に散々嫌みを言いながらしぶしぶ娘を俺に渡すんだろうな。
その時の義父の表情が目に浮かぶよ。
「そうだな、加奈子の両親が揃わなくては意味がないしな。」
「そんなことないわ。私達は仮にも挙式はしているもの。今回は盛大なお披露目パーティーみたいなものでしょ?」
「でも、挙式もするんだろう?」
「勿論よ。だってみんなに祝福されてやりたいの。」
きっと、加奈子は教会で挙式を挙げたいはずだ。挙式を終えた俺達を鳩を飛ばしてみんなが祝福してくれるのだろう。
なんとなくドラマでそんなシーンを見たような気がする。
「それでね、透に一つお願いがあるの。」
「は?」
加奈子のにっこり微笑むその笑顔が俺には異様な微笑みに感じ嫌な予感がした。
案の定、何故か俺だけ結婚式の二日前からホテル暮らしを強要された。
俺にはホテル暮らしをする意味がサッパリ分からない。
いったい何故加奈子は俺にだけこんなことをさせるのか?と、俺は落ち込みの方が酷くなる。
結婚式が近付くとマリッジブルーになると聞くが、これがそう言うものなのだろうか?と思わずそう感じた。
本当のマリッジブルーは絶対にこんな意味のものじゃないはずだが・・・
それにしても、ホテル暮らしでは丸まる二日も加奈子と会えないなんて寂しすぎる。
そう思って予約されていたホテルの部屋へと行くと、そこのスウィートルームのベッドにはナイトドレス姿の加奈子が待っていた。