いつかウェディングベル
■幸せみつけて
「透、ねえ、これどう思う?」
「そうだな、彼女はモデル並みに背が高いからこれでは派手すぎないか? 新郎の希望ではあるが品のない新婦では式自体が盛り下がるだろう?」
「そうよね。」
「ですが、専務。彼女は派手な色を好むし招待客のほとんどがそれを知っているようですし、ここは花嫁の希望を取り入れてもう少し明るめの仕上げにしてはどうですか?」
「吉富、お前の趣味を聞いているんじゃない。俺は加奈子と話しているんだ。」
「これまでドレスに関しては専務より私の方がお客様の心を掴んできましたが? かなり高い評価を頂き嬉しく思っていますよ。」
本当に、この男はどこまでこのウェディング会社に居座るつもりだ?
「吉富さん、一度生地の見本を見てもらってそれから決めましょうか?」
「それがいいよ。一生に一度の花嫁姿なんだ。本人の希望するものを作ってあげたいからね。」
「じゃあ、透。私は吉富さんと打ち合わせに出かけてくるわ。」
「ああ、気を付けて。」
加奈子の会社は俺達の結婚式が評判が良かったこともあり、その後、少しずつだが結婚式のプランニングの依頼が入るようになった。
販促課のメンバーはこちらの仕事が性に合うのか業績を上げていっている。
資金不足で経営が回りそうにない時期もあったが、それは大株主である俺や親父の会社のJQ(株)へと吸収することで解決した。
今ではJQ(株)のウェディング部門として運営されている加奈子の会社になる。
「専務、そろそろこのスペースも手狭になるんですが、事務所をどうにか出来ないですか?」
岩下は元々得意分野だった動画関係を担当している。
これまで事務所の奥の部屋でひっそりと仕事をしていたがもう少し広い作業場が欲しいと文句を言うことが多くなった。
考えてみれば俺と加奈子が結婚式を挙げてから3年の月日が過ぎていた。
この会社の業績が伸び、この狭いスペースでの営業はかなり厳しいと感じるようになった。