いつかウェディングベル

「なあ、加奈子。あの映像化というものは新郎新婦には必要なものだと思うか? 俺は新婦の個人的欲求を満たすだけのものに感じるのだが。どうだろう、新郎側が少しでも難色を示せばあまり勧めない方が良いと思うのだが。」



俺も結婚式では苦い思い出がある。


そんな想いを一生引きずって生きていくなんて俺はあの結婚式をこいつらに任せたことを後悔している。


俺はまさか自分の生い立ちをあそこまで暴露されるとは思わなかった。


それに、親父やお袋が惜しみなく情報提供していた事実に俺はかなりショックを受けた。


それも生まれた時の裸の写真やおねしょしてベソかいている写真までなんで我が家にあるんだ?!


それに、加奈子との馴れ初めだけならまだしも俺の婚約話まで映像化するなんて、あの時、どれだけ俺が愚かな男なのかを皆に知られてしまった。


だから、結婚式後しばらくは社内だけでなく得意先でもかなり恥ずかしい思いをさせられてきたんだ。


そんな想いをこれから結婚しようとする男にとてもじゃないが勧めるなんて俺は出来ない。




「もしかして私達の結婚式の時のこと怒ってる?」


「怒りたいけど、あれは加奈子じゃなくてアイツらが余計な事をしたんだろ?」



そうなんだ、加奈子は俺達の出会いから結婚までを劇的に映像化しようとした。


それを、販促課のチームと親父とお袋らが話し合って生まれた時からのストーリーに書き換えた。


それも、とんでもない写真をふんだんに使ってだ。



「あれには私も驚いたのよね。それに、私と透のキスしてた写真なんて誰が撮影したのかしら? あれって私達が交際していた時のものなのよね。」


「さあ・・・誰だろうね?」



あの写真は俺の隠し撮りの写真だ。それをパソコンに入れてたのをきっと親父が抜き取ったんだ。


俺も最低なことしたけど親父はもっと最低なヤツだな。

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