いつかウェディングベル
「だけど、芳樹の生まれた時の写真や動画は最高だったでしょ? あれは私のアイデアだったのよ。」
「あれには感謝しているよ。俺は芳樹が生まれた時を知らなかったんだ。あんなに可愛い芳樹を俺は抱けなかったなんて・・・・今思っても後悔している。」
「透ってば、あの時号泣したのよね。皆の前で『芳樹!ごめんよ!』って。」
「・・・・昔の話だ」
「そうね。でも、良い思い出でしょ?」
「そこだけはな」
「だからやっぱりこれから結婚する人にも、そんな心に残る温かみのあるお話を作りたいのよ。幸せは皆で分かち合わなきゃね。」
確かに、俺は、あの時、映像が流れて来なければ産まれた当時の芳樹を知らないままでいただろう。
今思えばあの動画は俺には最高のプレゼントだった。
だけど、泣いたんだよな。大の男が、結婚式の最中に恥ずかしげもなく大泣きしてしまった。
今思えばもの凄く恥ずかしいことだが・・・・
でも、あの映像のなかからベストショットを写真にし今はリビングの写真立てに飾っている。
俺達の歴史の一ページになっている。
そう思えばあの恥ずかしい動画もありなのかと思えてくる。
しかし、おねしょはダメだ。それに裸の写真もだ。あれだけは絶対に却下だ。
それにしても、あれからもう3年の月日が過ぎようとしているなんて。
子ども達が大きくなるのも頷ける。
「透? 聞いてるの?」
「そうだなぁ、芳樹と奈美の成長記録をそんな風に作ったらいいよな? そう思わないか?」
「聞いてないわね・・・・」
加奈子は溜息を吐くとどこかへと行ってしまった。
俺はハネムーンベビーの奈美の記録だけは生まれた時からしっかり写真や動画に残している。
芳樹の時に出来なかった反動からなのか、自分の子ども達の記録は好きな時に見れるようにDVDに保存したいと思っている。