いつかウェディングベル
急いで透のいるフロアから逃げるように離れてしまった。
その後、芳樹の所へいくつもりが透に見られている気がして芳樹のところへは行けなかった。
心も体も鉛を抱えているかのように重く辛い時間を一人で過ごしてしまった。
それでも刻々と時間は過ぎていく。
あまり昼食は喉を通らずそれでも飲み物だけはしっかり摂取した。
今、ここで私が倒れるわけにはいかないんだ。芳樹がいるのだから。
昼休みが終わり午後からの就業の時間になると重い足取りで自分の仕事場のあるフロアへと行った。
すると何やら私の仕事場が騒々しい。
誰かが来ているかと思いきや人事部長自らのお越しだ。
私が持ち場に戻ると一斉にみんなの視線を集めてしまった。
今度はいったい何が起きたの?!
連日の騒ぎに少々のことでは私は驚かないわ。
だけど、人事部長のお出ましに多分これまでの騒動とは少し種類が違う騒ぎが起きていることには違いない。
「やっほー」と、思わず手を振りたくなった・・・・
皆の真剣なその顔をなんとか解してやりたい気分だ・・・
皆の見つめるその目が今の私にはとても痛々しい。
「え・・・と・・・」
流石に私も言葉に詰まってそれから先の言葉が出てこない。
「なにかあったんですか?」と聞くにも聞けない雰囲気が漂っていた。
「田中さん、明日付で異動です。明日からは社長秘書課で勤務してもらいます。」
人事部長のいきなりの異動宣告に私もまわりの人たちもみんな驚きで声にならなかった。