いつかウェディングベル
透は、私が書いた始末書をみんなの前に広げて見せた。
「ぶわっはははは!」と、蟹江さんらしくない下品な笑い声が響き渡った。
「田中・・・・お前、度胸よすぎだ・・・」
吉富さんはただでさえ冴えない顔色なのにもっと青ざめていく。
「うわぁぁぁぁぁ!! なんてことを!!」
部長は完全に頭を抱え込んで嘆いている。
課長も部長同様かなりショック状態だ。
流石にこの始末書は悪かったか?
あんまりムカついていたので「へのへのもへじ」と書いてやったのだ。
これには透も面食らっていたようだ。
呆れ顔で私を見ていた。
「辞表は受け付けない。それに、明日からの社長秘書課への異動辞令、確かに言い渡したぞ。」
相も変わらず横暴よね透。そんな一方的な言い分が通るとでも思っているの?
残念ながら透の思い通りに事は運ばないわ。
「横暴です。私は昨日辞表を受理されました。個人的理由で会社を辞めるのです。
採用は会社側が決めることですが、辞めることは社員である労働者私たちの権利です。
それが認められないのであれば労働基準監督署へ申し出るだけです。」
そう言ってまだ手元に準備していた退職届を取り出し透へ手渡した。
が、それも透によって破られた。
「これ以上面倒は起こすな」
受理しないから騒ぎが大きくなっていくのだから、黙って受理しなさいよ。
「失礼します」
そう言って、もう一枚の退職届を人事部長へ手渡して私はそのまま早退してしまった。