いつかウェディングベル
しっかり抱きしめ何度も重ねた唇が愛しくて甘く深いキスをする。
まるで久しぶりにキスするように俺は夢中になった。
すると、隣から咳払いする声が聞こえやっとキスが終わった。
何だろうと見るとすっかり周りの視線を独占していた。
男達はにやけた顔をして羨ましそうに見ていたが、女達はドラマのワンシーンでも見るかのような目をしていた。
流石に不味かったかなと少し反省したが、俺達のキスに日下さんは俺が本当に妻の加奈子を愛していると分かってくれただろう。
「まるで新婚夫婦のようですね。大きなお子さんがいらっしゃるようには見えませんよ。」
加奈子は嬉しそうな顔をして俺を見つめた。そして、俺にしなだれかかるとすっかり甘えて腕に抱きついた。
「今も新婚だと思っていますよ。だって、私は透が大好きなんですもの。」
よほどさっきのキスが嬉しかったのか加奈子に告白されてしまった。
幸せに満ちた顔で言われると俺も嬉しくなり加奈子をもっと抱きしめたくなる。
「私達よりあなた方の方が結婚式を控えたカップルの様に見えますよ。」
「え、もしかして美薗さんと日下さんて結婚なさるんですか?!」
「加奈子、もしかしなくても二人は結婚されるんだよ。」
「まあ、おめでとうございます!」
加奈子の表情がかなりイキイキとしていて目が恐ろしいほどに光っている。
俺は考えたくないがもしかして加奈子は善からぬ事を考えていないだろうか。
俺は背筋が凍りそうになるほどに嫌な予感がする。
ここは世間知らずの加奈子を黙らせてこの場から連れて帰った方が良さそうな気がする。
なのに、美薗さんは自ら爆弾を抱え込もうとしている。
「あら、結婚式と言えば奥様はウェディングプランニングの会社を経営なさっていたのでは?」
俺は恐ろしくて加奈子の顔を見れなかった。