いつかウェディングベル
加奈子は自分が作ったウェディングの会社は俺より大事な存在ではなかろうかと錯覚するときもある。
それだけ加奈子にとっては意味のある会社ではあるが、夫の俺としてはかなり寂しいものがある。
「結婚式のプランニングとウェディングドレスも作っているんですよ。愛しあう二人の為の世界で一つしかない心のこもった結婚式をしています。」
「世界で一つしかない結婚式? 秀彦さん、私達もそんな結婚式したいわね。」
「面白いですね。それで、どんな結婚式なのですか?」
美薗さんも日下さんもただの社交辞令だと思うのだが、それにしてはかなり乗り気で加奈子の話を聞こうとしている。
加奈子をパーティへ連れてこなかったことの不機嫌さは完全に直ってしまったが、ウェディングプランニングの話を持ち出されると加奈子は意欲満点で話始めるから中々話しは終わらない。
きっと、美薗さん達は呆れるだろうが・・・
それにしても、二人ともやけに楽しそうに加奈子と話をしているが、本当に結婚式の相談をしているのだろうか?
俺はあまりウェディングプランニングの方の仕事には口を挟まないようにしているから、ここでも、話は加奈子に任せている。
最近では会社のプランニングの仕事は吉富らに任せっきりになっていただけに、こんなところで自分がプランニングの仕事ができると嬉しいのだろう。
俺と居るときよりもイキイキとした表情が少々妬けてしまう。
加奈子はどんな結婚式にしたらいいのか、二人の為に一緒に考えるのが好きなのだろう。
この仕事を加奈子から完全に取り上げるのは可哀想な気がする。
「まあ、お二人ってガーデンウェディングをやりたいのね!透!聞いて!素敵だわ!私たちの時を思い出すわね。」
確かに俺達の結婚式は一生忘れられないほど心に残るものになった。
それは、良い意味と悪い意味の両方あるが、今から結婚式を挙げようとする幸せなカップルに水をさすようなことは言えない。