いつかウェディングベル
しかし、俺達の結婚式は元販促課の連中の悪戯心に親父の悪巧みのせいであんな恥ずかしい結婚式になった。
けれど、美薗さんは顧客になる為、同じ結婚式でも俺達のような恥ずかしい結婚式にはならないだろう。
「柿崎さん、どうかなさったんですか?それとも、奥様のプロデュースされた結婚式をもう一度やりたいとか?」
「あら、秀彦さん。きっと、奥様となら何度でも結婚式もハネムーンもやりたいのよ。だって、未だに新婚さんみたいですものね。」
「いえ、結婚式は一回やれば十分ですよ。」
あんなものを何度もやりたいと思う奴の気が知れない。
とてもじゃないが、俺はごめん被る。
「折角ならばお二人の愛の軌跡を映像化して流すのはどうでしょう?皆さんとても喜ばれますよ。二人が如何に愛しあいこの結婚を望んでいたかを、ご両親だけでなく出席してくれたお友だちにも知ってもらえますから。」
「新郎新婦の生い立ちをビデオ化するのは良く有りますよね?それとは違うのですか?」
「ええ、生い立ちではなく結婚する二人のラブストーリーとでも言うのでしょうか。」
「ラブストーリー?恥ずかしいわ!」
そうそう、恥ずかしいものだ。殆どが見世物状態で招待客には何もかも暴露され生きた心地がしない。
あんな思いは二度としたくない。
きっと、日下さんも俺と同じ意見だろう。ならば、ここは、あまり加奈子に力説させるのは良くない。
なのに、日下さんの加奈子を見る目はかなり興味津々だった。
「楽しそうですね。私達の結婚式でもやりたいですね。美薗もそう思わないか?」
「ええ!やりたいわ!」
いや、ついさっき、ホンのさっき恥ずかしいと言わなかったか?
なのに、それでもそんな恥ずかしい事を承知でやろうとする二人の感覚が俺には理解できない。