いつかウェディングベル
自分の心に「昔には戻れない」と何度も言い聞かせてきた。
そして、それを透にも分かってもらおうとした。
けれど、透の熱い思いに私の体は反応してしまう。
頭では透から離れる必要があると判っていても、心と体は違う。
どうしても透を求める体が私の心まで支配してしまう。
抱きしめられキスされると私は体の思うが儘になってしまう。
透に抱きかかえられ寝室へ運ばれても抵抗出来なかった。
ベッドに下ろされ透がネクタイを外すと私は体が疼きだす。
外されていくシャツのボタンを私も手伝ってしまう。
ベルトを外す透の手を払い自らの手でベルトを緩める。
「加奈子」
「透」
呼び合う言葉はそれだけで十分。
後は肌を重ねるだけで全て物語ることが出来る。
どんなに言葉で罵っても、拒んでも、肌が重なればお互いの心の内が見えてしまう。
その指先一つの動きで、触れる唇の感触で、触れ合う肌の温もりで、
心の中をさらけ出してしまえる。
「愛している」
この言葉だけで私たちの心が通じていることを感じ取れる。
お互いにまだ忘れることのできない情熱を体の内に秘めているのが分かる。
どんなに時を経てもこの思いが褪せることなく残っていることを。