いつかウェディングベル
買い物リストをメモすると透は急いで買い物へと出かけて行った。
その間、私は家の中を弄るわけにもいかずリビングのソファーに座って待つことにした。
すると、リビングの飾り棚やテレビの周りに小さな可愛い小物が置かれているのが目に入る。
「素敵、私こういうのが欲しかったのよね。婚約者の人が買って置いたものかしらね。」
婚約者のことをあまり良く言わなかった透だけど、この部屋を見ていると彼女との時間を感じてしまう。
きっと、この小物も彼女が選んでここに置いたのね。
その辺の雑貨屋で買ったものではないわね。
どこかへ旅行した時に購入してきたものだわ。
まるでお土産品みたいなものがいくつもある。
海や温泉へ行った時のホテルのお土産コーナーにありそうなガラス細工もある。
私が好きなイルカのガラス細工もあるわ。
きっと、彼女も私と同じ好みだったのね・・・・
こんなに彼女との思い出の中で過ごしているのに婚約破棄するなんて、透は何を考えているのか私には分からない。
それに、
この部屋は居ればいるほどに息が詰まりそうになる。
彼女のこと本当に透はなんとも思っていなかったの?
とてもそうとは思えないほど大事に飾ってあるんだもの。
そんな置物を見て私の頬に涙が流れてきた。
「やだ・・・・私ってば」
すっかり涙脆くなってしまって、これじゃあ母親失格よ、加奈子!
一人りで立派な子に育てるってあれだけ啖呵切ってたのに、透の部屋に来ただけでこんなに脆くなるなんて。
私ってこんなに情けない女だったんだって、ここにいればいるほど思い知らされてしまう。