いつかウェディングベル
透の手が伸びてくると抱きしめられる?と思っていたら、頬を流れる涙を拭き取ってくれた。
いつの間にか涙を流していた私。
そんなことに気付いていないなんて私ってどれだけ透のことばかり考えているの?
「ごめん、気にしないで。」
「気になるだろ?なんで泣く?」
私は首を左右に振るのが精一杯だ。
透に迷惑をかけてもいけないし、自分の為にも早くこの関係にピリオドを打たなければならない。
なのに、
そうなりたくない私が泣いているのだ。
私に、もう一人の私が教えようとしているのだろう。
透を逃がすなって。今がチャンスだって。
芳樹がいるのだから、婚約破棄した透を取り戻すチャンスだって。
だけど、
無理だと心の奥深くからもう一人の自分が私に問いかける。
このまま流されて透のそばにいても未来はあるのか?
一度は捨てられて酷い目にあったのを忘れたのか?
透はいずれ社長になるのにそんな人と一緒にいられるのか?
周りに反対されながらも愛し続ける自信はあるのか?
そんなの愚問だよね。
もう、分かっているじゃない。
芳樹の存在を知ったから透は私を手放すのが惜しくなっているだけ。
だって、私達が再会してからどれくらいの日数が過ぎたの?
なのに、その間、透は私に近づこうとしなかった。
私を抱きしめてなんてくれなかった。
キスだって、芳樹の存在を知ってからじゃないの。