いつかウェディングベル
今朝はコンビニで適当に透が買ってきたものばかり、だから、大したものは何もない。
「帰りにスーパーで買い物して帰りましょう。」
「了解。さあ、芳樹一緒に帰るぞ。」
まるで親子で帰宅する光景みたいだ。
確かに、私達三人は親子には違いない。違いないのだけど戸籍上は他人だ。
その他人という間柄を埋めるにはもっと時間が必要なのかもしれない。
子どもとの関係より、私たちの間にある蟠りがどうしても無くならない。
頭で判っていても心が許せない。
それに、私達の間には気持ちだけでどうにかできる問題ばかりではないのも知っている。
今日は、まだ、何もことは起こらない。
透は何も話さないけれど、芳樹を今後どうするつもりなのだろう?
それが一番気になるところだ。
「加奈子、どうした?」
「あ、ごめん。今夜は何を食べたい?」
「作ってくれるのか?」
「透だけ食べさせないわけにはいかないでしょ?お世話になっているんだし。」
そう、透に食べさせたいから料理を作るのではない。
私と芳樹の夕食を作るだけ。ただ、お世話になっている透へも食べてもらうだけ。
だから、透の為に作る料理ではないのだから。
まるで、自分に言い聞かせているみたいだよね。
「気分が良くないのか?だったら外食しよう。」
「そんなことない。ただ、考え事していただけ。」
私の態度が透の癇に障ったのか良い顔をしない。
もしかしたら私が嫌がっているように感じたのかもしれない。
「どこかへ食べに行こう。芳樹の好きそうな店でいい。どんな店でもいいよ。そこへ行こう。」
透は仕事柄ファミレスなんて行ったことないでしょうね。
でも、私と芳樹が行くのはそんな店。それでも透は平気で一緒に食事ができるの?
「ファミレスならいいわよ。」
「じゃあそこへ行こう。案内してくれるね?」
透は私の言う通りにファミレスへと連れて行ってくれた。