いつかウェディングベル
まるで本物の家族のように私たちは三人で食事をした。
ファミレスへ入って行っても全く違和感のない私達。
他のお客の中に溶け込むかのように店で食事を済ませた。
ただ、透が店内を歩けば女性客の目を惹いてしまう。
透もそろそろ30歳近くなり男性としての魅力が増している。
独身にしておくには勿体ないくらいの色香を放ついい男だ。
誰かのモノで独占されていても不思議ではない。
そんな透と一緒に歩くのは心が痛い。
自分の隣を歩くとは言え、今の透と私の間には何もないのだから。
芳樹の父、母として今一緒にいてもこれは永久的なものではないのだから。
「さあ、帰ろうか。」
眠そうにする芳樹を抱っこしてくれた透は、もう片方の手を私へ差し出した。
差し出されたその手をどうしようかと悩みながらも、今は素直に掴み取ろうと思った。
掴むその手を握り締められると頬がピンクに染まる。
思わず俯いてしまった。
すると、透は指を絡めて強く握り締めた。
私は思わず透の顔を見つめてしまった。
すると、透は何事もなかったかのようにしている。
けれど、触れる透の手の平や指の熱に透の気持ちが伝わってくる。
伝わった熱は私の体に入り込んでくると私の思考回路は滅茶苦茶になる。
「芳樹がいるからじゃなくてもう少し俺たちのことで話し合いが必要だと思わないか?」
透には既にプロポーズをされた。
だけど、それだけでは受け入れられない。
透は私達とは違うのだから。
だから、
「今は何も言わないで。話し合いより、今は考える時間が欲しいから。」
もっと考えたいから。
私の気持ちを察してくれたのか透は暫くは待つと言ってくれた。