いつかウェディングベル

「なんだよ、吉富、お前目立ち過ぎ。蟹江の手伝いしていろよ。
そして、俺は田中さんと一緒に受付するんだよね♪ 頑張ろうね、田中さん!」


しっかり両手を握りしめて嬉しそうにしている江崎さん。


そんな江崎さんの手を振り払う吉富さんは江崎さんを睨みつけていた。


「同じ職場の仲間なのに何で吉富ってそう喧嘩腰なんだよ。」


「いや、俺は江崎も仲間だと思っているよ。」


にっこり笑うと吉富さんは江崎さんの背中を押して私から遠ざけてくれた。



「江崎君って懲りないわね」


蟹江さんは大きなため息を吐くと私の顔を見て更にため息を吐いた。


その二度目のため息ってどういう意味なんですか?


聞きたいけど怖くてともて聞けない。


私は蟹江さんの顔を見るのが少し怖くなって坂田さんと岩下君の所へと行った。


午後からの宣伝についての打ち合わせをするために。


「ええ? 社員用webサイトの開設?」


「そうなの、情報課へお願いしたら社内向けの簡単なサイトだからすぐに作成してくれるそうよ。
そのサイトから投票も可能にしてもらったのよ。」


「お前、よく情報課の連中にOKさせたな。」


「岩下君、田中さんの行動力を甘く見たらダメよ。」


「しかし・・・」



坂田さんはあまり気にも留めない様子だが、岩下君は情報課の人たちが他の課の無謀な注文をよく受けたと感心していた。


勿論、通常なら事前に提案書を出しそれなりのプレゼンをするなりして納得してもらわなければこんな仕事は引き受けないでしょうね。


だから、ここで透の専務の肩書を利用したのよ。


透が専務で良かったわ。


この際、透の名前を使ってとことんこの企画成功させて見せるわよ。


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