いつかウェディングベル

「説得ですか? してないですよ。」


そんなの説得したら透が了承するはずないじゃない。


そんな当たり前の質問しないでよ~と、言いたいが口に出して言えないこの辛さ。


何とも言えませんが・・・・・完全に冷や汗ものですよ、吉富さん。


「じゃあ、これって?!」


吉富さんはかなり顔色を変えていた。


そして、それは他の社員も同じ状況だった。


特に、部長のここまでの青ざめた顔は初めて見た気がする。


「なんだか凄いことになっているね。どこのフロアに行ってもこの話題でもちきりだったよ。」


私達の様子を見に透がやってきた。


「せ・・・せん・む・・・」


更に部長の顔が真っ青になって今にも倒れそうな様子で声も出ていない。


「それが、どのフロアでも女性社員から何か声を掛けられるんだが意味が分からなくてね。
いったい、今度の企画はどうなっているんだい? 皆の期待がかなり大きいようだから私も楽しみにしているんだよ。」


何も知らない透は会社内がこの企画で盛り上がっていることを喜んでいた。


何も知らないということは本当に幸せなことなのよね。


身を以って感じて欲しいわ、透。


「専務はご存じでは?」


部長に続き今度は吉富さんが真っ青になってしまう。


専務であり今回の企画のチーフ的存在の透に無断で起こした行動に吉富さんは言葉が詰まった。


何をどう説明していいものか悩んでいるようだ。


「それで、どうなってるんだ?」


透は私達がやろうとしていることがどんなものか知りたがっていた。


仕事柄当然のことなのだけども。


この企画の全貌を知った時の透の顔は見ものだわ。

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