その夜、ギターは、ひそやかに泣く
ギターを弾いているおにいさんたち。
あっちとこっちと、競争するみたいに声を張り上げている。
悪いけど、二人とも上手じゃない。
ついでに、ルックスがイケてない。
みんな自分たちのペースで、なんだかよくわからないけれど、楽しそうだ。
白いアーケードの内側は、光がこもって、もわぁっ、と明るい。
声や足音や音楽は、丸い天井をめぐってから、降ってもどってくる。
すずは、ピアノの発表会をするコンサートホールを思い出した。
ちょうど、リハーサルや開演前みたい。
暗くも明るくもない、あの感じ。
小さな音でさえふくれ上がって響くから、ピアニッシモのタッチも、楽譜をめくる音も、だれかのあくびも、よく聞こえるのだ。