その夜、ギターは、ひそやかに泣く


すずは、左手にギターケースの肩ひもをつかみ、右手でレッスンバッグを抱きしめて、思い切り前かがみになって、かけ出した。


腕をふれない状態で、脚の力だけで走るって、きつい!



二十歩を数えたところで、ブハッと息を吐き出した。


息をしながら、さらに三十歩。


あとは、数がわからなくなった。



すずは、下を向いたまま、とにかく走った。


走って走って、よっぱらいの声が聞こえないところまで走った。



もう限界だ。


へろへろ、と、脚の力がぬけた。


しばらくしゃがみこんで、息を整えた。


< 18 / 45 >

この作品をシェア

pagetop