その夜、ギターは、ひそやかに泣く
すずは、左手にギターケースの肩ひもをつかみ、右手でレッスンバッグを抱きしめて、思い切り前かがみになって、かけ出した。
腕をふれない状態で、脚の力だけで走るって、きつい!
二十歩を数えたところで、ブハッと息を吐き出した。
息をしながら、さらに三十歩。
あとは、数がわからなくなった。
すずは、下を向いたまま、とにかく走った。
走って走って、よっぱらいの声が聞こえないところまで走った。
もう限界だ。
へろへろ、と、脚の力がぬけた。
しばらくしゃがみこんで、息を整えた。