その夜、ギターは、ひそやかに泣く


くやしいけれど、そのとおりだ。


すずはまだ、ギターが弾けない。


ここを押さえたらこの音が鳴る、という「スケール」は覚えた。


でも、すずの小さな体では、ギターの大きさを持てあましてしまう。


左手の力も弱すぎて、ネックをにぎりこむことができない。



でも、と、すずは言った。



「あたし、ギターが好きだよ。


ピアノより、ギターにさわってるときのほうが、ずっとずっとドキドキする。


ちょっとずつ、ギターの練習もしてるの。


ママがいないときにね。」


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