その夜、ギターは、ひそやかに泣く
ママは、すずがギターを練習しているところを見ると、困ったような顔で笑う。
かたくて強いギターの弦で、すずの指が傷ついてしまうのが、いやなのだという。
だから、すずは、ママにかくれてギターをさわる。
こっそりデートをするロミオとジュリエットみたいで、とってもいい感じだ。
「あと二年だよ、ベル。
二年もたてば、ベルの背も伸びて、弦の押さえ方のコツも覚えて、マーティンO―18が弾けるようになる。」
「ほんと?
早くそうならないかなぁ。」