その夜、ギターは、ひそやかに泣く
5
シンデレラの魔法がすっかり解けてしまったころ、すずはタクシーで家に帰った。
一文字傷のマーティンをケースに入れたおねえさんは、すずがタクシーに乗り込むのを見届けて、それから地下鉄の駅の暗い階段に消えた。
部屋に帰り着いたすずは、ドアを閉めた。
しーんとしている。
魔法みたいな、夢みたいな、夜だった。
「現実だったんだよね。」
すずの手の中に、おねえさんからもらった白いピックがある。