その夜、ギターは、ひそやかに泣く
「うん。
大丈夫だってば。
ごはんを食べて、お風呂に入って、ピアノのおさらいをして、塾の宿題をして、歯みがきをして、十時には、ねるよ。
いつもどおり。」
ママは、黄色いオムライスに、ケチャップで真っ赤なハートを描いた。
すずは、玄関までママを送った。
ドキドキしながら二十まで数えたら、ママが乗ったタクシーが走り去る音がした。
すずは、にっこりした。
胸の前で、両手のこぶしをにぎる。
「さあ、運命の夜が、始まった!」