みんなの冷蔵庫(仮)1
「由緒正しき家柄って訳じゃない。今あるのは父親が一代で築いた財だ。つまり成金だから……他の金持ちにしたら、僕は育ちが悪い。さっきの電話の奴くらいかな、そういうの気にしないのは」


握りしめたままの携帯電話に視線を落とし、京極は自嘲気味に笑った。

今まで見せてきた、細胞が騒ぐような甘くて色っぽい、時に爽やかな笑顔ではないのに、私はドキリとした。

そんなつもりはなかったが、地雷を踏んでしまったのだろうか。

どうしよう。
この場合謝るのも良くない気がして、私は彼に何と言うべきか必死に考える。


「あの……」


京極が部屋に現れてから、その圧倒的な存在感ですっかり存在を忘れていた佐田さんが、遠慮がちに後ろに立っていた。



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