みんなの冷蔵庫(仮)1
シグマはこんな風にいつも笑顔で私を見ていたっけ。

あの頃の私は夢中になってシグマを守っているつもりでいたけど、今思うと実際はただの空回りだったかもしれない。


「マラソン大会でこけて足から血がいっぱい出てるのに、泣きながら最後まで走ったりしたでしょ。頑張り屋だったよ」


シグマはソファーに張り付いたまま体を丸くし、見上げて言う。

あの頃二人で過ごした思い出は、照れくさいけど温かくて、自然と笑顔がこぼれる。


「恥ずかしいからやめてよ」


まさか何年も経ってからこうして二人で思い出話をすることになるだなんて、あの時の私には想像もつかなかった。


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