みんなの冷蔵庫(仮)1
とりあえず床に置きっぱなしの雑誌をベットの下に滑り込ませ、小さなちゃぶ台のようなテーブルを畳んで振り返ると、佐田さんは狭い玄関に窮屈そうに立っていた。


「狭いけど、どうぞ上がって下さい」

「いいえ。ここで」


佐田さんはきっぱりと言い、自分の足元を見た。


「すみません。玄関を水浸しにしてしまいそうだし、外にいます。ドアのすぐ前にいますから安心して下さい」


全身ずぶ濡れの佐田さんから滴り落ちた水滴は、狭いコンクリートの玄関スペースに大きな水溜まりを作っていた。


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