みんなの冷蔵庫(仮)1
「だからこそ、上がって下さい。風邪引いちゃいます」


私はお風呂場横の棚から、出来るだけ使い込んでいないバスタオルを選んで取り、佐田さんに手渡した。


「ありがとうございます」

そう言って微笑んだ佐田さんの目尻を見ると、胸が苦しくなる。

佐田さんに抱き着いてしまった事を思い出し、顔から火が出そうな程熱くなって、慌ててタオルをもう一枚出し、顔を包んだ。
瞼を閉じると思い出す、佐田さんの腕と温もり、声と言葉。

自分でもなぜだかわからない、あの時突然叫んだ佐田さんの名前。


でも、本当に来てくれた。

呼んでいいと言ってくれた。
深い意味はないとわかっていても、込み上げるこの気持ちをせき止める事はできなくて。


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