みんなの冷蔵庫(仮)1
顔を拭き終わりこちらを見た佐田さんと目が合う。
ぎこちない笑顔を作ると、佐田さんも穏やかに微笑み返してくれた。

駄目だ。恥ずかし過ぎてまともに顔が見れない。

佐田さんの黒髪が、濡れて朝露のように光る。

私は顔に当てたタオルの隙間から、ちらちらと覗くように佐田さんの顔を見上げた。

バスタオルを頭から被り、豪快にゴシゴシとやる佐田さんの横顔を見てしまったら、スイッチが入ったみたいに私の全身は熱くなる。


「一人暮らしの女性の家に長居は良くないですし、外に出てます」


佐田さんはもう一度お礼を言って濡れたタオルを私に手渡し、ノブに手をかけた。


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