みんなの冷蔵庫(仮)1
「くららさん?」


後ろで声がして振り向くと、佐田さんが濃いグレーのスウェット上下姿でそこにいた。

始めは驚いた表情をした後に、私の顔を見て何かを悟ったようで、気まずそうな顔をした。

それがより一層私の胸に苦しみを与えた。


助けに来た訳じゃなかったんだ。
あの時の私は餌で、釣竿に付けて投げ込まれた。

それに食いついた獲物を捕らえようとした、ただそれだけだったんだ。


「佐田さんも知ってて……知ってて私が襲われるのを待ってたんですね!?」


後から後から溢れる涙で視界がぼやけた。

ゆっくりこちらに近付いてくる佐田さんを、力いっぱい殴ってやろうと、拳を握った。


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